PROJECT STORY ボナック核酸 開発ストーリー

まったく異なるアプローチで
安定性の高い核酸医薬を開発。

欧米の巨大ベンチャーが先行する核酸医薬の開発に、一石を投じるべくスタートしたのが私たちボナックです。なぜ、後発の小規模ベンチャーでありながら既存の特許に抵触しない「ボナック核酸」を開発することができたのか。過去に製薬メーカーの研究所長も務めるなど、これまでの実績と経験を活かして研究開発に取り組む共同創業者・大木の言葉を通して、開発の舞台裏をご紹介します。

共同創業者 農学博士 大木 忠明

後発だからこそ、戦略的に研究を進行。
既成概念を覆すアイデアを模索。

2006年、RNA干渉の発見がノーベル生理学・医学賞を受賞したのを契機に、二本鎖短鎖RNAの開発が世界を席巻しました。

ボナックを設立した2010年当時には、すでに大半の特許が欧米の巨大ベンチャーに集中しているという状況でした。私たちはそれらの知的財産に抵触しないように、先行しているベンチャーの研究内容や特許などを徹底的に分析しながら、異なるアプローチを模索していきました。

設立して間もない小規模ベンチャーが生き残るには、何より「これまでにない発想・アイデア」が不可欠だったんです。

体内での安定性、実用的化学合成法、
一本鎖長鎖RNAで2つの課題に挑む。

欧米ベンチャーが開発していた二本鎖短鎖RNAには、壊れやすいという短所があるため、体内の必要な場所へ薬を届ける方法が大きな課題となっていました。

ときには油分で包むなどのドラッグデリバリーシステム技術を活用したり、核酸そのものを化学修飾したりと、さまざまなアプローチが検討されていましたが、一本鎖長鎖RNAに取り組んでいるところはほとんどありませんでした。

というのも一本鎖長鎖RNAの場合、全体的には安定しているものの、カーブになっているリンカー部分の核酸がすぐ酵素に分解されてしまうためです。

また、実用的化学合成法が確立されていないこともネックとなっていました。一本鎖長鎖RNAは、折り返さなければならないため、二本分の長さを形成する技術が必要となるんです。

しかし、これらをクリアできれば、独自の核酸医薬品が開発できる可能性が高いということ。実際に開発に取り組んでいくなかで、前述の課題を凌駕するメリットが次々と明らかになっていきました。

一本鎖長鎖RNAのメリット

  • 安定性:二本鎖短鎖RNAに比べて壊れにくい。(リンカー部分は除く)
  • 生産性:二本鎖では二回必要となる核酸合成のプロセスが、一回で済む。

幅広い研究に取り組んできたからこそ
たどり着いた「アミノ酸」という答え。

一般的に研究者は、核酸なら核酸、アミノ酸やペプチドならその専門家という方が多いかと思います。ただ私は、核酸やアミノ酸はもちろん、糖や脂質などの生体成分の研究について広く経験してきました。

そこで一本鎖長鎖RNAのリンカー部分について、核酸ではなくアミノ酸を用いることを考えたんです。アミノ酸なら酵素に分解されることがありませんから。核酸化学では、ほとんど見られない発想ではないかと自負しています。 採用したのは、「プロリン」というアミノ酸。

タンパク質はアミノ酸が二次構造でつながって構成されているのですが、そのカーブになっている部分に用いられているのがプロリンなんです。天然の生体成分なので、化学修飾などによる毒性の心配もありません。実際に評価を行ったところ期待以上の成果が得られました。

一方、実用的化学合成法についても基盤技術を確立することできており、事業の実現に向けて引き続き努力を進めています。

アミノ酸を使用した「PnkRNA」を開発

最初に開発したボナック核酸「nkRNA」のリンカー部分にアミノ酸のプロリンを使用したのが、「PnkRNA」です。
タンパク質の二次構造を維持するβターンインデューサーとして知られるプロリンの性質を応用することで、nkRNAに比べて化学的安定性をさらに向上させることができました。

「特発性肺線維症」に苦しむ
患者の皆さんのために、一刻も早く。

こうして開発されたボナック核酸は、日米欧での特許審査を無事通過することができました。

アメリカの特許庁には実際に足を運んで説明を行ったのですが、「これは今までにない!」と驚かれたのを今も覚えています。そこから承認までは早かったですね。

現在は大手製薬会社と提携し、肺が線維化する難病「特発性肺線維症」の治療薬開発に取り組んでおり、2018年までの臨床試験も視野に入っています。

従来の低分子医薬品を用いたアプローチではなく、疾患の原因となるタンパク質をつくるRNAをターゲットにできる核酸医薬品が求められる領域です。

苦しんでおられる患者の皆さんに一刻も早く、たしかな薬をお届けしたい。その一心で、取り組んでいます。

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